薬害肝炎、年金問題を放棄 国民から見放された福田内閣
福田内閣の支持率が落ちている。新聞によっては40パーセントを切るというところまである。これはどういうことか。
もともと、福田さんは、安倍前首相が突然辞めて、急場しのぎとして登場した。福田さんは、バランス感覚があるし、年もいっていて落ち着いている。そして安倍さんのように性急に事を運ぼうとしない。だから、落ちついていて安心できるじゃないか、ということで一定の支持率を保ってきていた。
しかし、ここにきて支持率が下がり始めている。その理由の一つが防衛省の“守屋事件”だ。この問題が進展して、年を越すと政治家にも及ぶのではないかという情報もある。
もう一つは、12月の下旬になって再び明るみになってきた社保庁の問題だ。
約5000万件の消えた年金について、安倍前首相も舛添要一厚生労働大臣も「3月までに最後の1人までチェックし、支払う」と言っていた。しかし、書き写し損ないやコンピュータの問題などが原因で、消えた年金5000万件のうちその4割になる2000万件が解明できないことが判明した。
しかも、そのうちの1000万件は、帳簿から全く落ちてしまっていて、存在しないことになってしまっているということが分かってきた。
社会保険庁の消えた年金については、とにかく3月までに解明されると安心していた国民に大きな失望感を与えた。失望感は怒りに変わる。
お粗末な発言繰り返す福田首相と町村官房長官
さらに、この社保庁問題に対する福田首相と町村信孝官房長官のコメントがなんとも下手くそ極まりない。
福田さんはこれを「公約違反とは言えないのではないか」と発言し、後で実は「公約でどういう風に言っていたかが頭にさっと浮かばなかった」と釈明した。公約を忘れていたというのは、首相としてどうなのか、資質の問題に関わる。
町村官房長官も、「選挙ですから『年度内にすべて』と縮めて言った」などと発言した。非常に下手くそなコメントぶりで、国民の怒りの火に油を注いてしまった。
こうした福田さん、町村さんの発言は明らかに失言だと思うが、舛添さんの発言は失言とは言えないだろう。
舛添厚生労働大臣は、参院選の際に「最後の1人、最後の1円まで確実にやる」と発言したが、最近になって、「3月が終わればすべて年金問題がバラ色の解決ができているという誤解があった。『3月までに全部片付ける』とは言っていない」、「他の方が(厚労相を)やっても結果は同じだ」という発言をしている。これに対して野党からは問責決議案を出すという声も上がっている。だが、それは違うと思う。
これは、社会保険庁のサボタージュというより、犯罪的行為だ。そもそも民主党の長妻昭議員がこの問題を露呈させなければ、社会保険庁はいまだに隠したままだったはずだ。今年の2月14日に長妻議員が「5000万件行方不明、消えた年金」と打ち出しても、社会保険庁は柳澤伯夫厚生労働大臣(当時)、安倍首相(当時)に対しても「何ら問題はありません」と言い続けた。
年金問題はサボタージュというより犯罪に近い
官邸がこの問題が本当に大変だと気がついたのは6月9日のことだった。僕は、厚生労働省の最高幹部に取材をして「この4カ月間、厚生労働省は一体何をしていたのか」と聞いた。すると、その幹部は、「まことに恥ずかしい限りだが、社会保険庁というのは、昔で言えば関東軍のようなところで、完全秘密だから厚生労働省に何の情報も漏れてこない」と言った。
長妻議員が追及していることについて、どうなっているんだと聞いても「絶対大丈夫です」と繰り返すばかりだったという。
舛添さんが「3月までに解明する」と言い出したとき、社会保険庁はそれが無理だということがわかっていたはずなのだから、データをすべて大臣に出して「それは無理です」ときちんと言うべきだった。しかし、実際には彼らはただ黙って隠し続けていた。
9月9日の「サンデープロジェクト」に舛添さんを呼んだとき、僕は彼に「3月までに消えた年金問題のすべてを解明すると言っているが、解明できる根拠はあるのか」と聞いた。舛添さんにこの質問するにあたって、僕は事前に、総務省で作っている社保庁問題の第三者委員会に取材をしていた。そして、その第三者委員会の誰一人としてこの問題の実態を掴んでおらず、社会保険庁が全面的に隠しているために、何もわかっていないということを聞いていた。
舛添さんは、「田原さんの言う通りで、根拠らしいことは何もない。何もわからないのだ」と言っていた。舛添さんは、意気込みを言っていたのだと思う。社会保険庁や厚生労働省は早く実態を表明すべきだったし、あるいは舛添さんにきちんと事実を言うべきだった。これは政治の問題を超えて、むしろ警察・検察の領域だ。
薬害C型肝炎問題も被害者と決裂
福田さんの年金問題の失言も問題だが、薬害C型肝炎問題の対応の方がもっとひどい話だ。福田さんはこの問題に対して「裁判所の判決が出るのを待つ」と言った。冗談じゃない。現に被害者が出ているわけだし、これも厚生労働省のサボタージュによって被害者がどんどん膨らんできた問題なのだ。
小泉純一郎元首相は、ハンセン氏病問題できちんと謝罪をして、政府が補償した。福田さんもそうするべきだった。しかし裁判の成り行きを待つということで、彼は政治決断をしなかった。
これも大きな問題で、どうも彼は政治決断をしないのではないか、という空気が強くなってきた。一体この人は日本をどうしようとしているのか、総理大臣として何をしようとしているのか。もしかして何かしたいという気持ちすらないのではないか。このような気持ちが国民に広がってきていて、それが今の支持率の低さになっている。
1月15日に延長国会が終わり、18日か19日に新しい国会が始まるだろう。僕が福田さんに提案したいのは、ここですぐに内閣改造をすべき、ということだ。今の内閣は“安倍内閣”だ。福田さんは前政権の閣僚をほとんど何も変えていないのだから。
だからいち早く“安倍内閣”を改造して福田内閣を作るべきだ。そしてそこで、福田内閣の所信表明をすべきだ。福田さんは所信表明をやっていない。やっていないから、何をするつもりなのか、何をしたい人なのからわからない。
僕は先日、中曽根康弘元首相に「福田さんはどういう人なのか」と尋ねた。それに対して中曽根さんは、「道を歩いていたら財布が落ちていた。その財布を拾ったら、それが首相だった」と痛烈なことを言っていた。そして「どうも財布の使い道もまだよく分からないらしい」と皮肉った。
衆院解散、そして政界再編が始まる
民主党は、新テロ特措法案でも真っ向からの真剣勝負はやめたが、その代わり予算で本気の勝負をしようとしている。1月18日、または19日に始まる国会は、言うまでもなく「予算の国会」になる。予算そのものは、衆議院で通過すればよいのだが、予算関連法案は参議院を通過しないと成立しない。ここで民主党は徹底的に戦う。おそらく、先程述べた年金の問題もここで出してくるだろう。
他にも、予算関連法案にはいくつかの問題がある。道路特定財源一般化、暫定税率の扱いの問題である。民主党はここで徹底的に戦うだろう。戦い方によっては、民主党の支持率が上回る可能性がある。参議院で予算関連法案が通らないと4月から公務員の給料が払えなくなる。予算がないのだから当然だ。そこで自民党政府は暫定予算を組まなくてはならなくなる。しかし、当然ながら暫定予算をそうは続けることはできない。
だから、結局ここでまた「60日ルール」を使って衆議院に戻して「3分の2」を使って法案を通すということになる。しかし、またここで強引に通したら、民主党は間違いなく問責決議案を出す。そうなると、自民党は無視できなくなり、解散総選挙になる可能性が極めて高い。自民党の幹部にあたってみても、ここで解散総選挙の可能性が高いと言っている。
選挙となると、ここでまた問題が出てくる。もし民主党が勝てば、民主党の天下ということで問題ないが、僕はそうはならないと見ている。
おそらく、自民党と公明でやっと勝つという状態になるだろう。自民党だけでは勝てない。公明党と足してやっと勝つ。ところがこうなると、国会で法案が全く通らなくなって、にっちもさっちもいかなくなってしまう。参議院ではもちろん法案は通らないし、衆議院に戻しても今度は与党で「3分の2」の数が届かないため、議決できない。国会は全くの凍結状態になってしまう。
ではこうなったときに何が起こるのか。もしかしたらまた大連立構想の話が噴出すことになるのか。その可能性もあるが、むしろこのタイミングで、自民党も民主党も割れて、いよいよ政界再編が起きることになるかもしれない。
(
出典:田原総一朗の政財界「ここだけの話」 )
- 2007/12/27(木) 01:06:21|
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