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The Lean Office: Collected Practices & Cases (Insights on Implementation)
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Product Development for the Lean Enterprise: Why Toyota's System Is Four Times More Productive and How You Can Implement ItProduct Development for the Lean Enterprise: Why Toyota's System Is Four Times More Productive and How You Can Implement It

Michael N. Kennedy





市場変化に対応する新しい製造アプローチ
成功する「モノ作り」のモデリングを説く




収益悪化の根本原因

 製造業における「モノ作り」のビジネスは、顧客満足度を最大化するために、「何を(WHAT)」、「どのようにして(HOW)」、「提供するのか(SUPPLY)」といった課題を解決することが基となる。

 実際、顧客満足度を最大化すれば、売上げは向上する。だが、一方で、在庫やコストを最小化しなければ、利益は上がらない。つまり、「いかなる製品を提供するのか」だけではなく、「どのようにして、それを供給するのか」といった課題も、同時に解決しなければならないわけだ。しかも、今日では、顧客ニーズや競争相手がさまざまに変化している。そうした中では、改善と革新の取り組みを継続的に進める必要もあるだろう。

 このような視点でとらえた場合、日本の製造業が抱える収益構造上の問題点はどこにあるのだろうか。おそらく、それは、図1のようにモデル化することができるだろう。

リーン・オペレーション 図1


 もちろん、これは、あくまでも一般的な現象をモデル化したものにすぎない。ただし、図1に示した問題は、前世紀(20世紀)におけるマス・プロダクション(大量消費・大量生産)時代の手法から脱し切れていない、大半の企業に当てはまるのではなかろうか。

 マス・プロダクションの時代、製造各社における収益改善の方法論は、「分業」と「階層型の組織(縦割り型の組織)」という2つのビジネス構造(または、組織論)の上で成り立っていた。

 そのため、製造各社は、部分効率による局所的なコスト削減の積み上げによって、利益率の向上を図ってきたのだ。

 ところが現在、経済のグローバル化により、製造各社は厳しい国際競争の荒波にさらされている。また、それに伴い、同一のターゲット市場に向けて、同種の製品が過剰に供給されるようになった。そのため、製造各社は、新製品を相次いで市場に投入せざるをえなくなり、必然的に製品のライフサイクルは短くなっている。加えて、製品供給ルートのグローバル化や産業構造のモジュール化(後述)などにより、製造各社は、生産/販売拠点の分散化も余儀なくされているのである。

 このような経営環境下では、マス・プロダクション時代の部分最適の考え方を切り捨てなければならない。

 例えば、マス・プロダクション時代の手法に従えば、製造・物流コストを切り詰めるために、「まとめ生産」や「大量ロット物流」といった局所的な対策が講じられる。しかし、今日において、このような手法を取ると、在庫の増大と、それに伴うコストの上昇、および、キャッシュ・フローの悪化を招く。また、そうなれば、部分最適を「是」とする従来型の経営論理(経営のシステム)により、縦割り型の組織の中で、さらなる局所的な最適化が図られることになるだろう。そして結局は、在庫量とコストが、一層増大するといった悪循環に陥るのである。

 以上のように、製造業の収益構造を、各事象の因果関係をベースにモデル化すると、「設計から製造、物流、販売に至る横串連携の不備」、「コスト中心の(コストを基準にした)部門評価」といった点が、収益悪化の根本原因として浮かび上がってくる。

 これからの製造業界で勝ち残るためには、このような根本原因を断ち切らねばならないのである。


“勝つ”ための4つの条件

 ならば、上述したような収益悪化の根本原因を断ち切り、製造業界で勝ち残るためには、いかなる戦略を展開すればよいのだろうか。

 筆者は、ここ数年来、SCMの本質を見極めるべく、「ジャスト・イン・タイム(JIT)生産」や「制約理論(TOC:Theory of Constraints)」※1、および「リーン・オペレーション」(後述)といった、新たな「モノ作り」の概念(もしくは、モデル)についての研究を進めてきた。その結果、こうした考え方に基づく「モノ作り」の革新や、ITを駆使した組織間の横連携を実現することが、企業の勝ち残りの条件になるとの考えに至っている。

 そうした条件を、経営上のプラクティスとして表現すると、以下の4つにまとめることができる。

(1)リーン・オペレーションへの移行

(2)設計と製造の同期化(コンカレント・オペレーションの実践)

(3)戦略的バッファ・オペレーションの実現

(4)モジュール化とバーチャル化、およびグローバル化への対応

 以下、上記4つの条件について、もう少し詳しく見ていくことにしよう。

※1:制約理論(Theory of Constraints)は、イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット氏が1970年代に開発した生産管理ソフトウェア(「Optimized Production Technology:OPT」)を起源とする生産管理の理論。その全体は、スケジューリング・プロセスを含む「ロジスティックス分枝」と、スループット、在庫、および業務コストを中心に据えた「業績評価システム分枝」、さらには、ゴールドラット氏が考案したとされる「問題解決/思考プロセス分枝」の3 つの要素から構成される。1990年代以降、欧米の製造企業はTOCを積極的に導入し、生産効率の向上に大きく役立ててきた。ゆえに、TOCは、JITをしのぐ生産方式として、日本でも注目され始めている。


リーン・オペレーションへの移行

 リーン・オペレーションは、米国MIT(マサチューセッツ工科大学)のジェームズ・ウォーマック博士が提唱した生産方式「リーン・プロダクション」に基づく概念である。

 リーン・プロダクション、または、リーン・オペレーションの「リーン(Lean)」とは、「やせた」、もしくは「脂肪のない」という意味の言葉だ。ウォーマック氏は、自身の著書※2の中で、自らが提唱する「無駄のない」生産方式に、このリーンという言葉を用い、マス・プロダクションと対比させた。

 これにより、リーン・プロダクションという用語が、マス・プロダクションと相反する生産方式の名称として知られるようになった。

 ともあれ、マス・プロダクション時代の生産/物流方式(または、サプライチェーン)を残存させたままで、製品戦略やブランド戦略、マーケティング戦略を展開し、需要を喚起すれば、余剰在庫や欠品の問題が生じる。そうした問題を解決するための経営戦略的な手法が、リーン・オペレーションとなる。

 リーン・オペレーションが目指すのは、少量多品種の生産/物流を効率的に行うための方式と、製品戦略やブランド戦略、およびマーケティング戦略を融合させた“無駄のない経営”である。

 それを実現するには、マス・プロダクション時代のような、階層型の組織と分業とを起点にした「縦割り経営」ではなく、機能横断的な「横串経営」を実践しなければならない。

 つまり、欧米流に言えば、「部分最適ではなく、全体最適に向けた、経営資源の有効活用を図る必要がある」というわけだ。

 ちなみに、筆者は、上記の「縦割り経営」を、目標至上主義的なトップダウン型経営であり、「横串経営」を、顧客のニーズ/要求を起点に、各組織の機能が連携して動作するプル型経営であるととらえている。

※2:ウォーマック博士は、以下の2つの著書(いずれも共著)の中で、リーン・プロダクションの理論を展開している。
●『LEAN THINKING』(『ムダなし企業への挑戦』稲垣公夫訳/日経BP刊/1997年)
●『THE MACHINE THAT CHANGED THE WORLD』(『リーン生産方式が、世界の自動車産業をこう変える。』沢田博訳/経済界刊/1990年)


コンカレント・オペレーションの実践

 先にも触れたとおり、製造ビジネスの基本は、「何を(WHAT)、どのようにして(HOW)、提供するのか(SUPPLY)」である。

 マス・プロダクション時代の製造業では、上記の「WHAT」と「HOW」の部分、すなわち、設計と製造(および物流)のプロセスが、「時系列的に順番に流れる分業のプロセス」であった。要するに、「何を作るのか」と「どう作るのか」、または、「どう配送するのか」といった決定が、順番に、そして個別に行われ、それぞれが独立したプロセスとして管理されてきたわけだ。

 だが、「横串経営」による全体最適を目指すのであれば、これらの意思決定と管理は同時並行的に行われなければならない。すなわち、製造と設計(さらには物流)を同時に管理するコンカレント・オペレーションを実践しなければならないわけだ。

 ちなみに、従来の日本では、製造現場の優秀な熟練工が、設計上の不備を補ってきた。また、それが、日本の製造業の強みであるともされてきた。

 しかし、今日では、各種工業用装置のインテリジェント化やCAD/CAEソフトウェアの進歩により、製造現場だけの技量や裁量によって改善しうる問題領域は極端に狭くなっている。そのため、製造の組織は、設計部門と密接に連携しうる能力や、そのための熟練度を上げる必要に迫られている。

 対する、設計の組織も、設計の変更を製造の工程に即座に反映させたり、部品・部材の調達効率を向上させたりするために、製造の現場や、パートナー企業(部品・部材のサプライヤー)との連携、および共同作業をスムーズに進めなければならならない。

 そうした意味でも、設計と製造(および物流)のコンカレント・オペレーションの実践は不可欠なのである。

 こうしたコンカレント・オペレーションを実現する際に、重要になるのが設計と製造の情報を統合化することだ。

 例えば、「モノ作り」のIT基盤をモデリングする場合、設計のアウトプットである「設計部品表(設計BOM=Bill Of Material)」と、製造における工程マスタ情報を含む「製造部品表(製造BOM)」という2つのデータが基本となる。

 ただし、多くの場合、これら2つのデータは、製造と設計の各組織内で別々に作られてきた。

 そのため、設計部門が、最終顧客が要望する機能を設計に取り込んだとしても、それによって作成されたBOM(設計BOM)は、製造や輸送の効率化とは無関係なものが多かった。

 言い換えれば、設計BOMは、製造や輸送など、「HOW」のプロセスにかかわるサプライチェーンの効率化を考慮したものではなかったのである。

 しかし現在、設計のプロセスを起点に、「モノ作り」のプロセス全体を見直さなければ、そのサイクルの短縮化や抜本的なコストダウンは望めない。したがって、設計BOMも、最終顧客が要求してきた機能を表現しつつ、下流(設計以降)のサプライチェーンの効率化を意識したものでなければならない。

 そこで、求められるのが、設計と製造のBOMを統合化することとなる。換言すれば、設計(「WHAT」)と製造(「HOW」)の2つを一体化する「統合BOM」の環境を構築することが必要とされているわけだ。

 この統合BOMをベースにした「モノ作り」のモデリングは、ある意味で、設計と製造(および、取引先や顧客との接点となる営業)の各機能要件を、全体最適を前提に定義しなおすことでもある(図2)。

 従来の製造企業では、業務機能ごと(または、組織ごと)に目標が定められ、それに向けて部分最適の施策が講じられてきた。

 しかし、これからは、顧客ニーズと製品を起点に、各組織の機能連鎖と全体最適を図っていかなければならない。そのためには、図2のような(統合BOMの)モデリングを行い、コンカレント・オペレーションを実践していく必要があるのである。

リーン・オペレーション 図2



戦略的バッファ・オペレーションの実現

 製造企業のサプライチェーンは、そのまま放置しておくと、どこまででも長く伸びてしまう。

 また、そうなれば、機能が異なる各工程(業務)間のモノの移動回数が増え、モノを置く場所(ストック・ポイント)も、連鎖する業務の数だけ存在することになる。当然、それは、在庫数量を膨らませる要因となるものだ。

 とはいえ、サプライチェーン上から一切の在庫を消し去ることは不可能である。なぜならば、製品に対する正確な需要を読み切ることも、自社の生産能力を完璧に保つこともできないからだ。それゆえに、一定量の在庫を「バッファ」として確保しておく必要があるのである。

 となれば、各業務ごとのストック・ポイントと、それぞれのポイントで自然発生的に生まれる在庫を可能な限り削減し、戦略的に保持したバッファだけを活用できるような仕組みを構築しなければならない。

 これが、すなわち、「戦略的バッファ・オペレーション」を実践するということである。

 また、ここで言う「戦略的に保持する(または、保持すべき)バッファ」の種類は、基本的に2つだけである。1つは、製品供給のボトルネックになりそうな製造設備の能力を補完する「能力変動バッファ」である。また、もう1つは、短期的な需要変動に対応するための「需要変動バッファ」だ。

 これら2つのバッファを確保してさえおけば、あとの在庫は不要となる。よって、サプライチェーン上で連動または連結する業務、設備を、可能なかぎり統合化し、ストック・ポイントの数を大幅に削減することが可能になる。

 例えば、図3は、戦略的なバッファの活用例を示すものだ。ここでは、各業務ポイント(「ワークステーション1」〜「同4」)にそれぞれ置かれた在庫(ストック・ポイント)を、2つの戦略的なバッファ(能力変動バッファと需要変動バッファ)に集約している。

リーン・オペレーション 図3


 具体的には、戦略的なバッファの活用により、ワークステーション2、同3、および同4から在庫(ストック・ポイント)をなくし、それぞれの処理を直接的に連結させている。そして、製品供給のボトルネックになりそうなワークステーション1の前に在庫(能力変動バッファ)を、さらに、「出荷(の業務)」の前には需要変動に備えたバッファ(需要変動バッファ)をそれぞれ配置しているのである。

 このような仕組みを、工場内のみならず、サプライチェーン全域にわたってモデル化し、構築すれば、在庫の適正化を実現することが可能になる。


モジュール化/バーチャル化/グローバル化への対応

 現在、製造業界における産業構造は、大きく変容しつつある。その変革の方向性は、いくつかのキーワードによって表現することができる。それは、「モジュール化」と「バーチャル化」、および「グローバル化」だ。

 当然ながら、これらの変革に対応していくことは、日本の製造業が勝ち残るための1つの条件となる。

 では、これらのキーワードが示す変革とは、具体的にどのようなものなのだろうか。まずは、それを簡単に説明しておくことにしよう。

モジュール化

 例えば、あるメーカーの工場が、電子製品の委託製造サービス(Electronics Manufacturing Services:EMS)会社として系列から離脱したとしよう。また、それと併せて、その系列の物流子会社が、サードパーティ・ロジスティックス(3PL)として荷主である親会社から独立したとする。このような系列子会社の離脱・独立が、いわゆる製造業におけるモジュール化と呼ばれる流れだ。

 この変革の流れは、米国自動車産業のビック・スリーの間ではすでに本格化しており、各社の系列部品メーカーは系列から離脱し、業界のサプライチェーンを構成する汎用的なモジュールとして機能している。

 また、コンピュータ業界を例に取れば、かつては、IBMなどのメインフレーマーが、プロセッサからハードディスク、OS、アプリケーションに至るすべてを開発、製造し、提供していた。しかし、現在、プロセッサ(および半導体)やOS、アプリケーション、ストレージ、ネットワーク機器など、それぞれの技術領域に特化したITベンダーが、コンピュータ産業全体を構成している。これは、ある意味で、コンピュータ産業のビジネス・モデルが、統合型からモジュール型へと移行したことを表すものだ。

 さらに、家電業界に目を転じれば、かつては、大手メーカーが系列の小売り店を擁し、開発・製造(生産)から流通までを包括的に支配するというビジネス・モデルが主流であった。しかし今日、このモデルは崩壊し、大手量販店と家電メーカーによる流通と生産の分離(モジュール化)が進んでいる。

バーチャル化

 上記のようなモジュール化が進行すれば、単一の企業内でビジネスに必要なすべての業務機能を提供するケースは少なくなる。その代わりに、企業内外の機能を連結させて、ビジネスを推進するというモデルが一般的になるはずだ。また、それが発展すれば、インターネットなりを通じて、企業間の業務機能が結合され、1つの仮想的(バーチャル)な企業体が形成されることになろう。これが、すなわち、バーチャル化と呼ばれる変革の流れである。

グローバル化

 グローバル化という構造変革の流れについては、とりたてて説明するまでもないだろう。

 今日、情報ネットワーク(インターネット)と輸送手段(海運・空輸)の発達により、生産拠点を海外に置くことの障害はかなり小さくなっている。しかも、地域によっては、先進諸国の数十分の1の人件費で、労働力を確保することができる。

 となれば、製造業界に属する企業は、生産拠点を含むさまざまな拠点のグローバル化を進めざるをえないのだ。

 現在、SARS(重症急性呼吸器症候群)やテロの影響もあり、日本の製造各社による(拠点の)グローバル化には、若干のブレーキがかかっている。しかしながら、デフレ経済が進行する中では、生産拠点を海外に移転し、製造コストをさらに切り詰めることは必須である。そう考えれば、製造業が、グローバル化の流れに逆らうことはもはや不可能であると言えるかもしれない。

 以上に示した3つの流れ(変革の流れ)は、新たなビジネス・モデルをかたち作るものだ。また、それらの組み合わせによって、製造企業のビジネス・モデルが進化し、多様化していくことになる(図4)。

リーン・オペレーション 図4


 なお、この図4に示すとおり、自社のコア・コンピタンスに特化し(モジュール化を推進し)、他企業、または国内外の経営資源を有効に活用する(グローバル化/バーチャル化を推進する)ようにすれば、顧客満足度に軸足を置いた経営の効率化を図りやすくなるだろう。ただし、すべての企業にとって、この手法が有効であるわけではなく、その効果の大小も一律ではない。したがって、製造各社は、それぞれが独自にモジュール化やバーチャル化、およびグロバール化の戦略を立案する必要がある。


オブジェクト指向によるモデリング

 ところで、筆者は、もともとSE(システム・エンジニア)として、職業人生のスタートを切った。その当時のシステム開発は、機能分析から始まる作業であり、そこでのモデル化とは、機能を表現することでしかなかった。そのため、フローチャートや機能関連図を用いて、システム設計を行うのが一般的であったのだ。

 だが、ここ数年の間に、Javaに代表されるオブジェクト指向言語や、オブジェクト・モデルの統一表記法(オブジェクト指向による分析/設計を行うための標準の表記法)である「UML(Unified Modeling Language)」が普及したことで、システム開発の手法にも大きな変化が見られ始めている。

 例えば、UMLやJavaを用いたシステム開発では、「製品」や「人」、「設備」といった経営資源をオブジェクトとして表現し、企業の業務の中で、それぞれが果たす役割を明確化するというモデリング手法が取られる。つまり、Javaなどによる今日のシステム開発(システム設計)は、機能中心型ではなく、モノ(オブジェクト)の役割を中心にしたものであるわけだ。

 こうしたシステム設計(または、モデリング)のコンセプトは、SCMのそれとまったく同じだ。というのも、SCMのビジネス・モデル(または、システム・モデル)は、「縦割り型の業務機能」ではなく、各経営資源の役割を中心に設計されるからである。

 こうした「モノ作り」のビジネス・モデリングにおいて、最も重要なオブジェクトとなるのが、製品(プロダクト)である。つまり、従来は組織別(もしくは、業務機能別)に製造業のビジネス・モデルが表現されてきたが、これからは、サプライチェーン上に存在する製品(つまり、キー・オブジェクト)を中心に据えて、組織横断型のビジネス・モデルを構築する必要があるというわけである。また、そうしたモデルが、ビジネス・モデルとして堅牢であり、かつ、 SCMの本質的な価値を導出することへとつながるのである。

 一方、以上のような観点からとらえると、新たなサプライチェーンのモデリングを行う際には、UMLの活用が有効であるという結論も導き出される。しかも、UMLによるサプライチェーンのモデリングでは、個々の企業戦略から導き出されるビジネス・モデルをベースに、問題解決のアプローチを取ることができる。

 この辺りは、ITベンダーが提供するソフトウェア・パッケージの機能によって、(個々の戦略やビジネス・モデルがないままに)業務改革を推進しようとしていた、かつての「BPR(Business Process Reengineering)」の手法とは大きく異なるものだ。

 周知のとおり、こうしたBPRの手法を取った多くの企業が、業務改善の試みに失敗している。つまり、サプライチェーンの最適化といった抜本的な組織改革や業務改革を図る場合には、それ用のソフトウェアについても、ビジネス・モデルありきで設計を進める必要があるというわけである。

 加えて、UMLによる設計では、コンポーネント化やカプセル化というオブジェクト指向プログラミングの手法を取り込むことができる。これにより、既存のソフトウェア資産や、市販の優れたコンポーネント/アプリケーションを組み合わせながら、自社のニーズに適したソフトウェアを設計することも可能である(図5)。

リーン・オペレーション 図5



成功のためのマインド・セット

 もっとも、サプライチェーンの(システム)設計は、製造企業の命運を左右するプロジェクトであり、決して簡単な作業ではない。

 よって、そのプロジェクトを管理、統括するマネジャーは、自社のビジネスのスコープを理解し、明確なビジョンを持ち、かつ、自分の頭で考え、十分に納得したうえで事を進める必要がある。仮に、それを怠れば、おそらく、大きな落とし穴に陥ることになろう。つまり、ITベンダーにすべてを任せていては、設計したサプライチェーンのシステムによって、自社のSCMが成功することは、まずありえないと考えたほうがよいのだ。

 また、多くの製造企業にとって、機能(組織)横断的な全体最適のシステムを設計することは、未体験の作業であり、そのプロジェクトには不確定要素も数多くある。それだけに、プロジェクトを推進する当事者は、「改革の実行者」としての強い意志と、緊張感が求められる。

 実のところ、著名なコンサルティング会社のコンサルタントも、見せかけの自信やハッタリで、顧客企業のSCMプロジェクトをスタートさせてしまうことが珍しくない。もちろん、こうしたプロジェクトは、最終段階で問題が発生することになるが、大抵の場合、コンサルタントらは、もっともらしい弁解(イイワケ)を展開し、顧客側を煙に巻く。その結果、責任の所在が曖昧なまま、SCMのプロジェクトが失敗に終わるケースがあまりにも多いのである。

 SCMのプロジェクトを推進していくうえで重要なのは、その目的と現状を注意深く見つめ、問題を早期に発見・解決していくマインド・セット(心構え)を持ち続けることだ。ときには、失敗を許容し、多少の打撃を受けてもすぐに立ち上がれる打たれ強さや精神力、および、冷静な判断力が必要とされるのである。

 なお、本稿の最後として、上の内容、すなわち、SCMプロジェクトによる業務革新を行ううえでの「心構え」を右の囲み記事にまとめておいた。ぜひ、今後の参考にされたい。

リーン・オペレーション 図6




(出典:今岡善次郎 ビジダイン代表取締役/コンサルタント




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  1. 2008/01/07(月) 06:00:26|
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