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スタグフレーション到来

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2008年景気展望(1) 戦後初のスタグフレーション到来か



政府や日銀によれば、2007年は景気拡大が6年目に入り、戦後最長の息の長い景気拡大が続いたとしている。しかし、一般国民にはそうした実感はなかっただろう。

おそらく、何年もたってから振り返ってみると、景気が後退に入った年として記憶されるに違いない。そして、2007年は格差の拡大と定着がなされた年でもあった。

国税庁の調査によると、給与所得者の平均年収は9年連続の減少。年収200万円以下の給与所得者が21年ぶりに1000万人を超える一方で、高額所得者は増加した。つまり、中流が崩壊して、上流と下流が増えるという近年の傾向が続いたのである。

平均収入の減少は非正社員が増えたことと大きく関係しているが、では正社員は安泰なのかといえばそうではない。夏のボーナスは3年ぶりに減少し、冬のボーナスも増えたのは一部の大企業だけで、平均値は減少した。これは、年収の減少が正社員をも襲ってきたことを意味している。

こうした収入減に加えて、2007年は増税にも見舞われた。定率減税が完全に廃止され、税源移譲にともなって住民税がアップ。多くのサラリーマンの場合、所得税率が10%から5%に減少する代わりに地方税率は5%から10%に上昇した。

合計の税率が変わらないので、損得がないようにみえるがそうではなかった。地方税は前年の所得にかかる税金であるため、税率アップは2007年分の所得分(つまり2008年の納税分)から課すべきなのだが、1年繰り上げて増税されてしまったわけである。そして、定例となった社会保険料負担増もあった。

収入減に増税が加わって国民の可処分所得を減らしたわけだから、消費が増えるはずはない。2007年の景気が力強さを欠いたのは当然のことである。




ひたすら景気が悪化した2007年

2007年の景気が力強さを持たなかった理由は、可処分所得の低迷だけではない。2月に日銀が2度目の利上げに踏み切ったのは100%の失敗であった。利上げの時期を見誤ったことで、じつにきれいにマイナスの効果がでた。

せっかくデフレ脱却が見えていたのに、その2月から消費者物価指数の対前年伸び率が再びマイナスとなり、日本経済がデフレに戻ってしまったのだ。

さらなる不幸は米国発のサブプライムショックである。全米で200万人以上のローン破綻者が生まれたため、サブプライム・ローンを組み込んだ証券は暴落し、証券を買っていた金融機関は大損をした。このことが、国際的な金融不安につながり、日本の株式市場の低迷にもつながっていったのである。

米国の住宅バブルが崩壊すると、その資金は原油市場に流れ込み、原油価格の高騰を招いた。1バレル=100ドルという極端な原油高騰の原因は、中国やインドでの需要増大ではなく、原油価格を支配しているニューヨーク市場に膨大な投機マネーが流入したことにほかならない。

原油高騰の後、マネーは次の商品へと投機先を求め、穀物、大豆などに流れ込み、バイオ燃料の需要増大による穀物価格の高騰に拍車をかけた。

こうしたことが弱っていた日本の景気の足腰を直撃し、11月には日経平均が1万5000円を割り込むまでになるのである。

景気後退を示す象徴的な数字は、11月に発表された9月分の景気動向指数の先行指数だろう。半年後の景気を示すとされる先行指数は、速報段階でも、改定値でもゼロとなったのである。つまり、新規求人数や東証株価指数など、先行指数に採用されているすべて指標が悪化したのだ。これは、実にバブル崩壊直後の1991年以来16年ぶりのことである。

こうしてみると、2007年は年初の好調をピークとして、以後はひたすら景気が悪化した1年だったということが分かるだろう。




収入減少と物価上昇は今年も続く

それでは、2008年の景気はどのようになるのだろうか。

日銀が2007年10月31日に発表した展望リポートによれば、政策委員の予測中央値は、2008年度の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)が前年比0.4%の上昇。実質経済成長率が2.1%であった。2007年4月時点の予想と比べると、消費者物価上昇率は0.1%の下方修正となったが、成長率見通しは2.1%で変わっていない。

ちなみに、2007年度の成長率見通しはどうかというと、4月時点の見通しより0.3ポイント引き下げて1.8%とした。つまり、2007年度は1.8%成長、2008年度は2.1%成長と見ているのだ。

これはどういうことかというと、日銀は2007年度よりも2008年度の経済成長が加速すると見ているわけだ。相変わらず順調に景気が拡大していくという安定成長路線を描いているのだが、本当にそんなにうまくいくのだろうか。

どう考えても、そううまくいくはずがないとわたしは思っている。少なくとも庶民の生活はバラ色どころか、厳しくなる一方であり、消費が拡大することは望めないだろう。なにしろ、昨年10月に消費者物価指数がプラスに転じたあとも、値上げが相次いでいる。菓子、パン、灯油、タクシー、ビール、牛乳など、ありとあらゆる商品が値上げを実施したか、あるいは予定している。

この物価高の根本が原油価格の上昇にあることは、ご承知の通りである。表面的には、以前の石油ショックと似ているのだが、決定的に違うのは、物価が上がっても労働者の給料が上がらないということだ。

かつては、物価上昇にスライドして賃金が上がっていくシステムがとられていた。そのために、労働者の賃金上昇がさらに物価上昇を招くというスパイラルを引き起し、狂乱物価の原因となってしまったわけである。

では、いまは何が起こっているか。原材料価格が上昇した分を、小売店が転嫁できない状態なのである。「第107回 食料品値上げ、狂乱物価より心配なこと」で述べたように、消費者の所得が減っているなかで小売価格を値上げしたら、とたんに客離れを起こしてしまうからだ。

そのために、すべてを転嫁することはできず、どうにもしようがない分だけ価格を上げているというのが実情である。

実際、昨年7-9月期の法人企業統計によれば、経常利益は20四半期ぶりに減益になっている。そして、粗利が減ってしまえば給料は十分に払えない。ない袖は振れないから、冒頭で述べたようにボーナスが減少する。こうして労働者の給料はさらに減っていくのである。





家計、株式市場ともに我慢の時期が続く

物価が上昇しているのに給料が減っていくという状態は、このまま2008年も続いていくだろう。少なくとも春闘までに解消される見通しはまったくない。恐ろしいことだが、これまで戦後日本が一度も経験したことのない「スタグフレーション」(不況下の物価高)が進行する可能性がある。

各企業の賃上げ率は今後2カ月ほどで決まっていくが、こうした環境のもとで賃上げ率が上向くことは期待できない。しかも、ボーナスについては春の時点で夏冬の分を同時決定する企業も多い。となると、2008年度の収入が大きく増えることはないだろう。むしろ減る方向にあると考えたほうがいい。

一方で、一度動き出した物価上昇は止まらない。あまりにも悲観的に過ぎると言われるかもしれないが、どう考えてみても2008年前半は家計の身動きがとれなくなるのが目に見えている。

株式市場に目を向けてみると、重要なポイントは2008年早々に明らかになる2007年10-12月期の決算だ。ここで、サブプライム関連の損失が7-9月期よりもはるかに大きく出てくると、株式市場が動揺して株価はしばらく低迷することが予想される。

悪い予想ばかりが先立ってしまう2008年だが、夜明けの来ない夜はない。景気の悪化は今年の前半で底を打つとわたしは見ている。なぜなら、前半に悪い材料が出尽くすからだ。

後半については、家計に劇的な向上は望めないものの、少なくとも日本経済全体は、金融当局の失策や世界規模でのハプニングがない限り、後半から上向いていくことだろう。



(出典 : 経済アナリスト 森永 卓郎

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  1. 2008/01/21(月) 06:00:01|
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