理系のための番組 業界人の根深い思い込み
〜竹内薫の科学・時事放談 より〜
私が解説を担当している「たけしのコマネチ大学数学科」(フジテレビ系、木曜深夜)という数学エンターテインメント番組が3年目のシーズンを迎えた。当初はワンクールで打ち切りだとみんなが思っていたようだが、あれよあれよという間に月日が過ぎ、去年の11月には国際エミー賞の最終ノミネートに残り、海外から企画を買いたい、という打診まで来るようになった。先月は、とうとう、主役のマス北野こと北野武が日本数学会出版賞という学術的に価値の高い賞を受賞。世界のテレビ界と日本の数学界からお墨付きを得ることとなった。視聴率をみても、深夜帯では異例の4%や5%という数字を記録することもあり、視聴者の支持もきちんと得ているようだ。4月中旬には待望のDVDまで発売されることになった。
とはいえ、いいことばかりではない。新シーズンに入るや否や、これまでよりも厳しい収録スケジュールとなり、出演者もスタッフも体力ギリギリで踏ん張っているような状況なのだ。深夜帯なので、なかなか有力なスポンサーも見つからず、制作費を極限まで切り詰めないと番組が続行できない。こうなると、出演者とスタッフの情熱、そして、視聴者の応援だけが、日本唯一の数学エンターテインメント番組の命運を握ることになる。
実をいえば、民放には正面切って数学や科学を扱う番組はほとんどない。この一番の原因は、テレビ業界で編成や制作に携わる人に理系出身者がほとんどいないことだろう。人間誰しも自分を基準に世界を計ろうとする。自分が苦手な科学の話なんて「誰も見ない」と考えたとしても不思議はない(新聞には科学部があるから、ちゃんと理系の情報を分析できる人材がいる。なぜ、新聞にはできて、テレビにはできないのか不思議である)。
だが、あまりに人材の出身分野が偏っていると、判断を誤ることも多くなるにちがいない。視聴者はみんな、本当に「科学なんていらない」と考えているのだろうか。もし、それが本当だとしたら、「たけしのコマネチ大学数学科」が長寿番組になることなどありえない。この番組は、いわゆる業界人の根深い思い込みに対するアンチテーゼなのだ。
最近、番組でやった問題をご紹介しよう。「正三角形を切り分けて、並べ替えて、正方形をつくってください」。一見、簡単そうな問題だが、伝説のパズル王ヘンリー・アーネスト・デュードニーが考えた問題で、1905年には英王立協会に招かれて解答を披露しているくらいだから、相当手ごわい。実際、私は番組のための解説を考えるため、自力で解こうとして、徹夜をしたが完全な解答には到達できなかった。そこで、番組ではヒントを用意して解いてもらったのだが、出演者たちは、文字どおり「知恵を振り絞って」解答に近づいていった。ここには純粋な知的楽しみがあり、不思議な爽快(そうかい)感がある。
え? 問題の答えを教えろ? 申し訳ない。意地悪なようだが、数学や科学の醍醐(だいご)味は、考える過程にこそある。1カ月以内には放送されると思いますので、どうか、それまでじっくりと考えてみてください!
- 2008/04/06(日) 06:00:55|
- 会社、仕事
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